令和7年度のヒグマ・ツキノワグマによる人身事故の特徴について
クマ類よる人身事故は、山間部や里山で暮らす人々や登山等のレクリエーションを楽しむ人々にとって深刻な問題です。本記事では、令和7(2025)年度に発生したクマ類の人身事故の特徴などを解説するとともに、事故を防ぐための方法を解説します。本記事を通じて日常生活や登山時の安全に役立てて頂きたいです。
令和7年度のクマ類による人身事故事例

令和7(2025)年度に発生したクマ類による人身事故の件数と被害者数を月別・都道府県別に集計しました(環境省速報値)。
月別の推移を見ると、秋(9〜11月)に被害が集中しています。特に10月は78件・89人と突出しており、これはクマが冬眠前に食物を求めて活発に行動する時期と重なります。ブナやナラなどの堅果類(ドングリ)の不作年には山中の食物が不足し、クマが人里へ降りてくるリスクが高まります。
一方、春(4〜5月)も山菜採りの季節と重なり、山林内での遭遇事故が多発しています。クマの冬眠明け直後は食物を求めて活発に動き回るため、この時期の入山にも十分な注意が必要です。
年度別・人身被害件数の推移(R3〜7年度)
年度別・人身被害件数の推移(令和3〜7年度)
年度別・月別人身被害件数の比較(令和3〜7年度)
年度別サマリー比較表
| 年度 | 人身被害件数 | 被害者数 | 死亡者数 | 前年比(件数) | 最多被害県 |
|---|---|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 80 | 88 | 5 | — | 長野県 (16件) |
| 令和4年度 | 71 | 75 | 2 | ▼11% | 岩手県 (23件) |
| 令和5年度 | 198 | 219 | 6 | ▲179% | 秋田県 (62件) |
| 令和6年度 | 82 | 85 | 3 | ▼59% | 長野県 (12件) |
| 令和7年度 速報値 | 216 | 238 | 13 | ▲163% | 秋田県 (59件) |
出典:環境省「クマ類による人身被害について(速報値)」各年度版
令和3年度から7年度にかけての人身被害件数を比較すると、令和5年度(198件)と令和7年度(216件)に多数の人身事故が発生しています。
令和5年度の急増は、ブナやミズナラなどの堅果類(ドングリ)の凶作により、クマが人里へ大量に降りてきたことが背景にあると考えられています。
令和6年度はいったん82件と例年並みに落ち着いたものの、令和7年度は速報値で216件・被害者238人・死亡者13人と、過去5年間で最悪の死亡者数を記録しています。堅果類の豊凶だけでなく、クマの生息数の増加や行動域の拡大などの要因が複合的に影響していると考えられています。
クマ類による人身事故防止
日常生活
日常生活でクマと遭遇しないためには、環境管理が重要です。生ゴミや食品廃棄物の匂いはクマを引き寄せる原因になるため、野外に放置せず指定の回収日に早めに出すことが必要です。また、コンポストもクマの被害に遭う場合があるため、電気柵などで囲うなどの対策を検討しましょう。家庭菜園や自宅の果樹では作物を放置せず、早めに収穫することが重要です。
住居周辺の管理では、草刈りを行い茂みや薮をなくしてクマが隠れにくい環境とすることで、クマとの偶発的な遭遇を避けることができます。
登山時の注意点

登山中にクマと遭遇しないためには、クマ鈴や笛など音を出す道具を使い、常に自分の存在を知らせましょう。特に視界の悪い場所ではこまめに音を立てることが効果的です。また、クマの痕跡(足跡や糞、爪痕など)を発見した場合は速やかにその場を離れましょう。
単独行動は避け、グループで行動することでクマが近づきにくくなります。食料やゴミは匂いが漏れないようしっかり管理し、山中に放置しないことも大切です。さらに、事前にクマの出没情報を確認し、入山規制が出ている地域には立ち入らないよう心がけましょう。
キャンプ時の注意点

キャンプ時にクマと遭遇しないためには、食料やゴミの管理が最重要です。匂いがクマを引き寄せるため、食料や調理器具は密閉容器に保管し、寝る場所から離れた場所に吊るすか専用コンテナを使用しましょう。ゴミは必ず持ち帰るか、指定された方法で処理します。
キャンプ地を選ぶ際には、クマの痕跡や出没情報を確認し、安全な場所を選びます。
クマと遭遇した時の対処法

クマと遭遇した際は、冷静な対応が何より重要です。視線を外しながらゆっくりと後退し、安全な距離を取ります。クマの本能を刺激する可能性があるため、走って逃げるのは避けましょう。また、最悪の事態を想定し、クマスプレーを使用する準備をします。
クマが接近してきた場合には最悪の事態を想定し、クマスプレーを使用する準備を整えておく必要があります。クマスプレーは、クマが接近してきた際に身を守るための有効な道具です。クマが5~10メートルほどの距離まで近づいてきた時に使用するのが効果的です。スプレーを使う際は、風向きを確認し、自分に逆流しないよう注意します。クマの顔に向けて噴射することで、強力な刺激成分が目や鼻に作用し、クマの動きを止めたり退散させることが期待されます。
もしクマが攻撃を仕掛けてきた場合、地面にうつ伏せになり、両手で首と後頭部をしっかり守ります。この姿勢を保ち、完全に動かないことでクマが興味を失い、立ち去る可能性が高まります。万一襲撃が終わった後も、すぐには動かず、クマが完全に去ったことを確認してから安全な場所に避難してください。
まとめ
クマと遭遇してしまうと危険を伴うため、クマとの遭遇を避けることが最も重要です。事前に出没情報を確認し、音を立てて自分の存在を知らせるなど、クマと遭遇しないように対策を徹底しましょう。

